知っているようで意外に知らない水

食べ物を口にしない日はあったとしても、水を口にしない日は殆どありません。

食べ物と水、どちらも生命を維持するには不可欠ですが、食べ物よりも水の方が絶対的に重要で、災害や遭難時などに水や食事なしに人間が生きられるのは、

水なしで3日(72時間)、食事なしで7日

と言われています。(年齢・体質・健康状態によって異なります。)

無しでは3日程度しか生きられない重要な水ですが、空気と同じように余りにも当たり前の存在なので、逆に良く知らない部分もあるような気がします。

大学ではなぜか経済学部にいましたが、高校では理系で化学も勉強したはずですが、改めて「水」について知っていることを全て書き出しなさい、なんて言われたら、困ってしまいます。

人間だけではなく、全ての生物が生命を維持するために不可欠な「水」について、この機会に改めて復習してみようと思います。

「水」とは何でしょうか?

寝起きの歯磨き・洗顔から、就寝前の歯磨きまで、私達の生活は水によって支えられ、水なしには考えられない程です。

  • 歯磨き
  • 洗顔
  • トイレ
  • 手洗い
  • 飲水
  • 調理
  • 洗濯
  • 入浴
  • 加湿

個人で使う以外にも、

  • 農業
  • 漁業
  • 工業

などの産業においても水は無くてはならない存在です。

そんな水ですが、中学生以上は学校で習って知っているように、水素と酸素の原子が結合(共有結合)してできています。

H2O

赤いのがO(酸素原子)で白いのがH(水素原子)

水素原子2個と酸素原子1個が共有結合という結合を行い、H2Oという水の分子が作られます。その水分子が無数に集まったのが、水(氷・水蒸気)です。

水は温度に応じて、固体・液体・気体の異なる3種類の姿をしています。

固体の氷から溶けて水に変わる温度を融点といい、水が気化して気体になる温度を沸点といいますが、

  • 融点:0℃(※厳密には0.002 519°C)
  • 沸点:100℃(※厳密には99.9743°C)

と非常にキリのいい数字になっています。

でも、本当は偶然キリのいい数字になった訳ではなく、

  • 水が溶ける温度を0℃
  • 水が沸騰して気化する温度を100℃

として、そこから温度の目盛りを設定したため(摂氏℃の場合)です。温度が水の様態を基準にして設定されていることからも、いかに水が私達の生活にとって重要なものであるかが伺い知れます。

更に、1870年代に国際キログラム原器が製作され1キログラムが定められましたが、それまでの間は1gの定義は4°Cのときの1cm3の水の質量とされていました。温度だけではなく、重さも水が基準となっていました。

また、水には多くの物資を安定した状態で溶かして含む優れた溶媒としての性質があります。水は非常に安定した物質なので、分解するには

などがありますが、多くのエネルギーを必要として、そのままでは簡単に分解することがありません。そんな安定した性質のおかげで、多くの物質を溶かし込む溶媒として働くことが可能になり、それが生命を誕生させることに繋がりました。

生命誕生に大きな役割を果たしているだけではなく、現在生物が生命を維持することができるのは、水が

  • 溶媒としての水が様々な成分を体内に取り込むのを助ける
  • 体内での化学反応の場を提供している

ためです。水は栄養素を取り込んだ状態で体内に入り、細胞へ栄養素を運搬するためであったり、化学反応を行う場であったり、様々な形で循環・利用され、生物に有害な物資を体外に排出するために利用され、常にぐるぐると循環しています。

また、生物の体内だけではなく、水は太陽のエネルギーを受け止めて、固体・液体・気体へそれぞれ形を変えることでエネルギーを地球上の様々な場所へ移転をしています。気象を生み出し、降雨によって岩石を侵食し、運搬・堆積によって地形を作り上げています。

地球規模から微生物の体内まで、地球上の全ての活動は水を中心にして繰り広げられています。その地球上の全ての活動を可能にしているのが、

水の優れた溶媒としての性質

です。

どんな物質も溶かし、安定した状態で保持して、必要な場所に送り届ける水の性質があったからこそ、地球は現在の生命に溢れた惑星になり、そして人間も生きていられる訳です。

そんな命の源とも言える水ですが、決して無限な訳ではなく、地球の全ての水を合計しても約14億 km3(= 1.4×1018 m3)しかなく、極めて有限です。

形態 存在割合
97.2%
氷河・氷山 2.15%
地下水(浅) 0.31%
地下水(深) 0.31%
淡水湖 0.009%
塩水湖 0.008%
土壌水 0.005%
大気 0.001%
河川水 0.0001%

水自体が極めて有限なのですが、その97.2%が海水として存在しています。湖の中には塩水湖もあって、全てが淡水ではありません。

地球上の全ての水の中で、淡水はたった3%に過ぎません。しかも、そのほとんどが南極大陸とグリーンランドで氷河や氷山として存在しているため、淡水として使用することができません。

淡水として存在しているのは、

形態 存在割合
地下水(浅) 0.31%
淡水湖 0.009%
河川水 0.0001%
0.3191%

このなかで、淡水湖・河川水・地下水浅が、人間が直接に利用することが可能な水になりますが、

地球上の水の総量のわずか0.3191%

しかありません。その中で人間が飲料として使用することができる水は更に少ないものになってしまいます。水道のタップをひねると当たり前のように飲料水が出て来る日本にいると現実味がありませんが、実は非常に優れた水環境に住んでいることを認識する必要があります。

「地球は青かった」という言葉通りに、地球を宇宙から見ると殆どを水が覆っている水の惑星のように見えますが、実は人間にとって利用できる水はわずかしかありません。

しかも、地球上の水の総量の97.2%を占める海水も、塩分を含むだけではなく、様々な汚れを含んでいるため、資源としての利用価値は低いと言われています。

最近ではマイクロプラスチック(マイクロビーズ)による海洋汚染が問題視されていますが、とにかく下水を通じて流れ込んで汚染物質は海で分解されない限りは全て海に蓄積し、水循環によって濃縮されていってしまうため、今後も悪化する一方で、改善することはありません。

そうなると

地球上の水の総量のわずか0.3191%

と言われている人間が使用可能な淡水は更に重要なものになっていきますし、その中で人間が飲料として使用することができる水は更に少ないですし、今後更に少なくなっていくことは避けられません。

かつて人間は国土や資源を求めて争って来ましたが、遠くない将来、水を求めて戦争をする時代が来るのかも知れません。

非常に優れた溶媒であるが故の水が抱える問題

水は非常に優れた溶媒であるために、地球の気象や地形などの環境を作り上げ、そして全ての生命を生み出した訳ですが、非常に優れた溶媒であるがゆえの脆さも併せ持ってしまっています。

ミネラルウォーターは勿論、全ての飲料用の水には多くの水以外の物質が溶け込んでいます。蒸留水(distilled water)として販売されている水でさえ、純度は高くなっているものの、純粋なH2Oではありません。透明なので何も含まれていなそうですが、実に多くの物質が溶け込んでいます。

「水」と一言に言っても、その純度には様々なレベルがあります。

河川や湖・池・沼の水に多くの不純物が含まれていることは明らかですが、水道水やボトルに入ったミネラルウォーターになると「純粋な水じゃないの?」って思ってしまいますが、水道水には人体へ害にならない程度の様々な不純物と塩素が含まれていますし、ミネラルウォーターには当然各種ミネラルが含まれてしまっています。

このように何でも溶かすことができる優れた溶媒である水であるがゆえに、場合によっては目的(健康・産業など)に有益ではない物質を含んでいる場合もあります。

水の種類
河川・湖沼などの水
工業用水
地下水
水道水
純水(蒸留水)
純水(精製水)
超純水
理論純粋(H2O)

用途に応じて、必要なレベルで不純物が少ない、または不純物を取り除いた水が使用されています。医療や工業においては、超純水(しっかりした規格はありません)のニーズも高く、日々大量の水が精製されて、超純水が作られ、使用されています。

しかし、超純水が作り出される訳ではなく、不純物を含んだ水から純度の高い水が「取り出される」形になるため、後には不純物をより多く含んだ水が残ってしまいます。自然に大きな害を与えない程度に浄化されるか、薄められてから、自然界に戻される訳ですが、結局純粋な水を得ようとすると、地球上の水は純粋な水から更に遠ざかるといういたちごっこのような状態を続けています。

今も昔も水は無色透明(少し水色)をしていますが、地球上の水の総量のわずか0.3191%と言われる人間が使用可能な淡水は量も質も低下し続けているのが現実です。

地球の気象や地形などの環境を作り上げ、そして全ての生命を生み出した全ての源とも言える水が汚染され続けている現状が改善されなければ、やがて人類の存在を脅かす問題となってしまうことは避けられません。

精製をしなければ飲料用にすることができなくなってしまう前に、水の大切さやありがたさを再認識して、できる範囲で大切にする運動を始めて行かなければなりません。

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